エーテルグライダー
銀河を駆ける輸送船長となってあらゆるものを配達しろ バラエティに富んだ得点源のピック&デリバリー
ソロ区分:ソロ専用ルール・スコアタ型
日本語対応:日本語版
これまで「異世界ギルドマスターズ」「オレとオマエの異世界転生」など、異世界転生ネタのボドゲを多く手掛けてきた六角えんぴつが、アートも一新して新たにスペースオペラジャンルに乗り込んだ意欲作。
貨物や乗客、宇宙怪獣まであらゆるものを届ける輸送船の船長となって星々を渡り歩き、得た利益で船の改造や投資、施設の建設などを行って事業を拡大させていく。
テーマやイラストの方向性が変わったとはいえ、独特のギャルゲー感(?)というかキャッチーさは健在で、スタート時にヒロイン的な後援者を選択し、指定された依頼を解決するとカードが裏返って表情が変化するなど(もちろん得点にもなる)、異世界ギルドマスターズにあったような関係性要素もしっかり実装されている。
ゲームシステムとしてはアクションポイント制で、ソロプレイではゲーム全体を通して8+8+4の計20アクションを行って様々な行動をこなしていく。
アクションにはピック&デリバリーの基本となる「積込」や「航行」のほか、建造や投資が行える「取引」があり、配送などの報酬として得られるキューブを使用して船を強化すると一度に行える行動が拡張されていくという仕組み。
強化自体はフリーアクションで、パラメータの組み換えもコストを支払うことで即座に可能で、状況に合った船のカスタマイズも重要な要素となる。
ゲームの舞台となる宙域にはアステロイドやエーテル流、エーテル渦などの他に(エーテル宇宙論の設定だ)、危険な宇宙生物や海賊の出没するデンジャーエリア、調査が必要な未調査エリアなどがあり、自力で航路を開拓していく必要がある。一度調査して航路を確保できれば、宇宙船の性能次第では安定した行き来が可能になり、交易が容易になってくる。
その交易は目的の星に荷下ろしした際に「実績」としてボード上にチップが配置されていき、埋めたマスに記された報酬を得ることができる。運送した積み荷は種類ごとに横に整列して徐々に良い報酬となっていくほか、縦一列を埋めることでもボーナスの勝利点が加算されるといった、セットコレクション的な要素もあるので、何をどこに運ぶのか、市場に配置された積み荷のチップをにらみながら計画を立てていく必要があり、悩ましい要素でもある。
実績ボードに配置できる積み荷の他にも、通常より少し遠い位置にある星に輸送する必要がある代わり、より良い報酬が得られる「乗客」や、宙域のデンジャーエリアで戦闘を行って入手するデンジャーカードなども報酬や勝利点につながり、それぞれ必要とされる船の強化が異なってくるので、上記の組み換えと併せて柔軟に配送を行っていきたい。
その他にも宙域に施設を建造して収入源にしたり、「投資」として特殊効果のあるタイルを獲得したりと事業を拡大させる方法がいろいろあるのだが、個人的にうれしいのはどのアクションも勝利点につながるようになっているところ。
この手のゲームによくある、「お金をいくらかせいでも、ゲーム終了時には何の価値もなくなる」ということがなく、所持金や定期収入の額、手持ちのリソースなどもすべて得点として清算され(さすがに効率はあまりよくはないが)、最後のアクションまでやったことが無駄にならないのは、ゲーム終了の瞬間までやることを試行錯誤出来てダレずに遊べる好ポイントと感じた。
前述の通りソロプレイは全部で20アクションとなっていて、その中で後援者が課した目標を2つこなしつつ、勝利点を何点まで伸ばせるかというスコアアタック方式。
やってみると20アクションはかなり少なく、いかに1アクションで出来ることを効率化できるかが高得点を獲得するポイントになるのでは、という印象。そのためには積極的に船の割り当てを調整してその時にやるべきことを明確にしていくのが重要なのだろう(5段階中3段階目のAA評価までしか取れていないので偉そうなことは言えないが)。
ゲーム以外にも、この作品になってカードやボード、コンポーネントのデザインも、これまでの作品に比べて質が飛躍的に向上し、大手パブリッシャーがリリースする商業作品に引けを取らない完成度に達したのも、ゲームを手にしたときの満足感向上に寄与していると感じた。