テインテッド・グレイル:アヴァロンの崩壊

ゲームブックライクなアドベンチャーゲーム。蝕まれた世界を旅して、滅びの運命からアヴァロンを救う手立てを見つけ出せ。

ソロ区分:COOPルール1キャラプレイ・目標クリア型
日本語対応:日本語版あり


(全15章のうち2章終了時点での、ファーストインプレ的な紹介である点をご了承ください)

アーサー王伝説をモチーフにした世界で、世界の崩壊を止めるために旅立った師匠たちを追ってアヴァロンを旅していく、というストーリー。

システムとしてはマップカードを配置してコマを動かし、各カードに記された番号に対応したストーリーブックを参照して選択肢を選んでいく、といった、オープンワールドのゲームブックといったプレイ感。

よく似たシステムのゲームとしては、以前紹介した「the 7th Continent」が後述の判定システムも含めてかなり近い。さすがに偶然ということはないと思うが、パクリというほど酷似してもいないので何とも言えないところ。

 

ストーリー設定的にはかなりダークで、もともと異形の生物が棲む土地にアーサー王率いる軍勢が侵攻して征服し、人間が住める土地にしたとされる由来があり、「メンヒル」と呼ばれる謎の石像の加護がなければ崩壊、異形化の影響にさらされてしまうという非常に危険に満ちた世界となっている。

そのメンヒルの力が弱まり、加護が失われるのも時間の問題ということで、先発の冒険者が旅立ったが、行方知れずになってしまったため、未熟な主人公がそれを追って旅をしていくことになる。

 

ゲームシステムにもこの設定が深くかかわっていて、毎ターンのはじめにメンヒルフィギュアに組み込まれたダイヤルのカウントが減っていき、0になると失われて周囲のマップカードが排除されてしまう。

メンヒルとダイヤル。メンヒルのデザインがそもそも異形で、こんなものに頼って大丈夫なのだろうかという不穏さがある

そうなる前に条件を満たしたうえでコストを支払って再起動するか、別のメンヒルを発見して起動するかする必要がある、という、このゲームにおける探索のタイムリミットの一つとして機能している。

それ以外にも、毎ターンのはじめにドローするイベントデッキにも枚数の限りがあり、こちらも基本的にドローすればするほどペナルティを受ける仕組みで、全体的に時間に追われながら探索を進める必要がある。

 

探索はマップカードに記された番号をもとに付属の分厚いストーリーブック「探索日誌」を参照し、行いたいアクションを選んで対応したパラグラフに飛ぶ、といったゲームブック的なシステムになっている。

リング綴じになっていて、開いた状態で項目を参照しやすいのは好印象(作りが若干頼りないが……)

ここが人によって好みが大きく分かれそうな部分で、選択肢を選んでみるまで何が起きるかわからず、リスクとリターンの見通しがきかないというのは、ゲームブックファンには違和感なく受け入れられそうだが、ゲーム的な部分を好むプレイヤーからは敬遠されそうな雰囲気がある。

特に上記のように制限時間の厳しいこのゲームにおいて、何の情報がどこにあるのかを手探りで探す必要がある初回プレイでは、一つの選択ミスが致命的になりがちで、数時間かけた探索が無為に終わってしまいかねない危険性があるのは、今どきのゲームとしては厳しい部類に入るだろう。

探索日誌冒頭にも書かれている通り、どこで何の手がかりが得られ、どんな条件が必要になるのかをメモしていき、情報が充実してきてからが本番という印象があるので、リスタート含め腰を据えてプレイできるプレイヤー向けのゲームと言える。

 

そのほかの判定としては、カードを使った戦闘・交渉の解決がある。

引いた遭遇のカードを起点として、キャラクターのデッキから引いたカードを重ねてアイコンをつなげていき、戦闘では指定された個数のキューブを確保、交渉ではゲージを一番上のマスまで到達できれば成功となり、報酬を得ることができる。

チュートリアル用戦闘の様子。赤で囲んだ部分が起動した効果(青枠起動にはコスト支払いが必要)

同じラウンドに2枚以上カードをプレイするには、稲妻マークのアイコンを起動させる必要があり、強力なコンボをプレイするために戦闘、交渉のデッキにカードを追加していくといった、デッキ構築の要素もある。

また、カードを重ねるという仕組み上、カードに記された効果を発揮したい場合は、カードをそれ以上重ねずにコンボを終えたり、逆に不利な効果を消すために一見意味のないコンボを続けたりという戦略も重要になっている。

 

そのほかにも各種パラメータやリソース、アイテム、膨大なフラグがあり、それらを管理しながら冒険していく、という要素にワクワクできるというプレイヤーにはお勧めできる。

プレイ開始から公開されている実績管理シート。それぞれの項目はどんな意味があるのだろうか……

 

注意点として、現時点で結構な数のエラッタが発表されているので、しっかり確認しておきたい。いくつかは表記ゆれなどのミスだが、一部進行に致命的な問題が出そうな参照パラグラフのミスなども含まれているので、有志作成された訂正シールや、付箋などでの訂正処理をしておいたほうがいいだろう。

これらのエラッタが追加される際は基本的にアークライトゲームズのツイッターで告知されるが、12/28のものなどは特に告知なく行われているようなので、プレイ前には毎回確認したほうが無難。そのあたりはしっかりしたサポートをしてほしいものだが……。

エラッタページにない不具合もまだいくつかあるようなので、怪しいと感じたら英語の情報を調べるなどして確認したい。

 

もう一つ、これは英語版からの問題点だが、メンヒルに差し込むダイヤルが、未塗装の状態だと数字の視認が困難でプレイがしづらいので、墨入れ塗装をお勧めしたい。

気合の入った塗装をしようとすると、道具や技術的な難易度が上がってしまうが、墨入れ程度であれば全体を塗って表面をふき取るだけで、塗料と筆一本で済むのでお勧め。

(上記の写真はそれに加えて、スプレーのつや消しを噴き、ウェザリング用白パステルで凸部分の強調をしたもの。やはり技術的な難易度は低い)

 

最後にBGGのスレッドにあった公式のアドバイスで、序盤プレイで実感のあったものを抜粋。

  • 探索は活力がある1日のはじめに行うようにする。探索によってトラブルが発生した場合、活力が残っていないと詰む場合がある。
  • メンヒル起動のリソースは早めに確保しておく。あとに回すと想定外に行動できなくなる場合もある。
  • 移動は慎重に。その場所でやり残したことがないかよく確認する。
  • 戦闘からは逃げられることを覚えておく。手番中どのタイミング(カードを引いた後でも、プレイした後でも。たぶんカード処理中は不可)でも活力1と敵の臨機行動のみで離脱できる。交渉も「失敗」のペナルティを受けて離脱できる。

完全な内容はこちら。

また、公式にはないが、メモを取る際は、特にそれがなくて選べなかった選択肢の場合、「どの場所で」「どの実績/秘密/能力値が要求されたか」をしっかり記録しておきたい。行き詰まった時に、思わぬ突破口が開けたりもするので(無駄骨になる場合も当然ある)。


テインテッド・グレイル 完全日本語版

【エラッタ】テインテッド・グレイル 完全日本語版