Metro 2033(小説)レビュー
日本では去年発売されたFPSの原作(ゲーム版のレビューはこちら)。
当初の予定では2010年6月頃発売される予定だったのが、その後音沙汰無く、2011年2月になって突然発売されました。
核戦争から20年。シェルターとしても設計されたモスクワのメトロでは、運良く避難できた一握りの人間たちが、駅ごとに小国家を作り暮らしていた。
そんなある日、主人公アルチョムの養父の元に、メトロを巡回する男、ハンターが立ち寄る。折しもアルチョムの住む「博覧会駅」には、正体不明の謎の存在、「黒き者(チョルヌィ)」が襲来してきており、ハンターはその現象を探る為に旅立つ。もし戻らぬ場合は、アルチョムがその使命を引き継ぐよう言い残して……。
というのが冒頭のストーリー。基本的にゲームと同じです。
ゲーム版と大きく違うのは、戦闘主体のゲームと違い、小説はメトロの人々の生活描写と、それをつなぐトンネルの探索がメインというところ。お互い得意とする表現が違うので、そこは当然ですが、その点もあって、ゲームをプレイしていると小説が、小説を読んでいるとゲームがお互いを補い合って、いっそう深みが増すように思えます。
ゲームのS.T.A.L.K.E.R.関係者ネタで出てきたと思っていた「ストーカー」は原作でも登場したのもちょっと驚き。こっちでは地上の物資を持ち帰るエリート兵士的な存在として描かれてます。さすがに図書館の小説ネタはなし(笑)。
後はゲーム版ではわかりやすく名前を変えていた(意訳?)駅名が、実名準拠になったことで、日本人にはちょっと分かりづらくなってます。ほとんどの駅名が「~スカヤ」なので。
なので、メインの栞とは別に、冒頭ページの路線図にも栞を挟んでおくと、アルチョムの足取りがわかりやすいかと思います。
ちなみにこの「~スカヤ」は日本語で言う「~の」という意味の「~スキー」の女性形で、ロシア語では地下鉄の駅は女性名詞、地上駅は男性名だそうです。ちょっとおもしろいですね。
後は駅の描写が、現在のロシアの地下鉄の駅がどんな感じか分かっていないとピンと来ないと思うので、読む前にGoogleかなんかの画像検索で、「moscow metro」とかで雰囲気をつかんでおくと良いと思います。日本の地下鉄とはかなり違うので。
主人公の住む「博覧会駅」の戦前(現在)の様子はこんな感じ。
あとがきによると、Metro 2033ユニバースのスピンアウト小説がいくつか出ているそうですし、海外でも同様の動きがあるようです。本編も続編の「Metro 2034」がベストセラーとのことで、是非こちらも翻訳して欲しいなと思います。
そのためにも、是非購入してアンケートはがきを出してください(笑)。