Fallout 1なんちゃってリプレイ Vaultから来た男:Log02「太陽」
「これで7……いや、8匹だったかな」
フレアの明かりを頼りに、10mmピストルをリロードする。
エドを襲ったのは、洞窟に棲むネズミだった。
ネズミといっても、Vaultのダクトに潜んでいるような可愛らしい奴じゃない。全長7、80センチもありそうな巨大な奴だ。しかも洞窟の闇に順応しているらしく、暗がりから突然襲って来る。フレアを焚くのが遅れていたら、俺もエドと同じ運命を辿るところだった。
こんな時は焦ったら負けだ。壁を背にして、フレアの明かりに入ってきた奴から順に仕留め、じりじりと歩を進めていく。
とはいえ、手持ちのフレアにも限りがある。今のところは指の一本も失っていないが、それでも腕や足からは、奴らの牙――門歯も『牙』って言うのかね――で裂かれた傷からの出血が無視できないレベルになっている。
そうこうしている間にもフレアの光が弱まり始め、あたりは闇に飲み込まれ始めてきた。ヤバい。
……と。
かすかだが、闇の中、行く手の先に光が見えた。フレアの明かりで気づかなかったが、どうやら出口が近いらしい。
「ええい、なるようになれ、だ」
俺は数発、後方の闇に弾丸を撃ち込むと、光に向かって駆けだした。
刺すような痛みで、目が開けていられない。いきなりマイクロオーブンに放り込まれたみたいだ。
それが俺の太陽初体験だった。
Vaultの人工照明なんて比べものにならない、不条理なまでに眩しい、まさに『熱線』と言っていいような太陽光線。閉じた瞼の上から容赦なく目を苛み、肌を灼いていく。
ネズミもこんなのはごめんのようで、追いかけてくる気配はないものの、このままじゃどのみちお陀仏だ。
なんとか手探りでバックパックから遮光ゴーグルを取り出し、岩陰を探し出してようやく人心地着いた俺は、辺りを見回した。
荒野(ウェイストランド)。そう言う以外に形容できない光景。ホロディスクで見たような緑の草原や森、水の流れる川なんてどこにも見えない、ひたすら乾いてひび割れた大地。所々、しがみつくように茶色の草が生え、枯れているのか生きているのか分からないねじくれた木がまばらに生えているだけだ。
地面の茶色とすすけた青い空、そして何者をも分け隔てなく灼き焦がす太陽。夢に見た『外の世界』には、俺の想像を遙かに超えた荒廃が広がっていた。
(Log02:EoF)