グラビティデイズ(PS Vita)
若干荒削りながらVitaを引っ張るパワーを秘めた良作
正式名称は「GRAVITY DAZE 重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」。
この長すぎるタイトルで、てっきりイロモノかと思ってノーマークだったんですが、PSストアで配信してる体験版やって目から鱗が落ちました。
ウリとしては、好きな方向に「落ちる」事ができる重力操作と、バンドデシネなどのヨーロッパコミック風の色使いのグラフィック。
こんな感じ。
この「落ちる」という要素は、自由に空を飛べるというのとはまた違った不自由さと奇妙な感覚(タイトルイラストのように、ビルの壁面を「下」にして立ったりする)があり、それを使ってオープンワールドの世界を行ったり来たりする独特の楽しさがあります。
重力操作は右スティックで照準を動かして行うほか、ジャイロ操作でも可能で、この「覗き込む」感覚が、どこか井戸の底をのぞくようなイメージと相まってか、不思議としっくり来る気がします。
攻撃も基本は落下による「重力キック」がメインとなって、システムにうまく組み込まれてる印象。ただ、ホーミングかかるとはいえ直線的で距離が必要な動作なので、すばやい敵がいるとちょっとストレスになったりしますが、その辺は射撃系のサブ攻撃とかでなんとか。
このオープンワールドと楽しい移動手段というのは基本的かつ重要な組み合わせだと思っていて、しかも探索するとパワーアップ源である「プレシャスジェム」が見つかるので、さらに移動の自由度が増すという、良い循環になってると思います。
難点としては若干短めで、すっきりしないストーリーと、一部上記の持ち味を殺したレベルデザイン。あとロードもちょっと長い。
プレイ時間は自分の場合でクリアまで9時間半。個人的には許容範囲ですが、短いと思う人も多いかもしれません。ミッションリストにDLCミッションなる項目があるので、今後の配信によってはもうちょっと増えるかも(個人的にはミッションあまり面白く感じなかったのでほとんどやってないんですけど)。
ストーリー自体も続編を意識したのか、大きな流れの中のひとつの事件が終わったくらいで、解決しないままの謎も数多く残ってます。
また、せっかくのオープンワールドなのに、ミッションとジェム探索くらいしかマップを使った遊びがなく、建物にも入れなかったり、話せるNPCも数人程度と、ちょっと空虚感があります。まあ、あまりあちこち行かされるようなお使いがあってもアレなんですが……。
レベルデザインに関しては、これはちょっとネタバレになってしまうのですが、「重力操作がほとんどできない上に、足場から落ちたら長い道のりを戻らなければならないステージ」というもの(要反転)。このゲームになぜそんなステージを造ったのか、理解に苦しみます。
ちなみに長いタイトルは「博士の異常な愛情」のパロディっぽい。これも正式名称が「博士の異常な愛情:または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」だし。
こっちがグラビティデイズのタイトル表示の一シーンで、
こっちが博士の異常な愛情のタイトル。右側のとこがまんまですね。
ともかく、色々惜しいところはありつつも、新規の、意欲的で、かつ十分なクオリティを持った、Vitaのキラータイトルたりえる良作かと思います。
(好)
・独特の浮遊感覚と箱庭を探索する楽しさ
・色調の統一されたグラフィック
(嫌)
・一部の、コンセプトと相性の悪いレベルデザイン
・すっきりしないストーリー
・戦闘はちょっと単調
・ロードが長い