Falloutリプレイ tMfV:Log14「マスター」

驚いたことに、内臓の大半を食われながらも、このスーパーミュータントはまだ生きていた。
とはいえ、流石に時間の問題でしかない。うつろな目で虚空を見つめ、うわごとのように何事かつぶやいている。
「皆……死んでしまった……なすすべもなかった……」

「お前は何者なんだ?」
タイコが問いかける。聞こえているか定かではなかったが、ともかくこのデカブツは答えた。
「私は……リーダーだった……これを……届けて……」
震える手でポーチを探り、血まみれのホロディスクを取り出す。
「お前達はどこから来たんだ?」
ディスクを受けとりタイコが重ねて問う。
「我々は……最高の素体を探していた……北西から……」
次第に呼吸が乱れてきた。うわごとも次第に意味をなさなくなってくる。
「待て、最後に教えろ。誰の命令でやってるんだ?」
「父よ……どこにいるのですか……マスター……マス……ター」
「マスター? マスターとは誰だ? おい!」
目の前の幻に問いかけるような姿勢のまま、スーパーミュータントは事切れていた。マスターなる人物が何者かは分からないが、そいつがスーパーミュータントを指揮しているらしい。

あとはこのホロディスクだ。


ディスクの中身はレポートだった。
こいつが率いる「スカベンジャー」のチームは、キャラバンを襲って人間と荷を奪っていたらしい。
そこまでなら野盗とそう変わりはないが、気になるのは、攫った人間で何らかの実験を行っていたらしいということだ。そのことは、さっきの「最高の素体」というセリフからも伺える。
そしてやはりここにも「マスター」の存在が記されていた。捕虜は「中尉」に送られ、実験結果はマスターに報告されるという仕組みらしい。

無駄足かと思われたこの調査も、意外なところで核心に一歩近づいたというわけだ。
北西にあるという奴らの本拠地、それを指揮する「中尉」と「マスター」の存在、彼らによって行われている人体実験。
まだまだ雲をつかむような話だが、手がかりには違いない。

「ここから北西というと……ブラザーフッドの基地があるな」
イアンが言う。
「ブラザーフッド?」
「ブラザーフッド・オブ・スティール。戦前の武器や技術を発掘して保存してるとかいう、騎士団気取りの連中だ。ただまあ……奴らが言うには「現地不干渉」ってコトで、キャラバンに手を出したり、こういった怪物を使い走らせてるって話は聞いたこと無いがな」
「戦前の武器ね……」
「奴らのパワーアーマーは強力だぞ。重火器をおもちゃみたいに振り回せるし、ちょっとやそっとの銃弾ならビクともしないって代物だ」
パワーアーマーならホロムービーで見たことがある。そのブラザーフッドとやらがどんな連中か分からないが、それが使える状態で残っているなら、マスターとコトを構えるなら役に立つかもしれない。

「よし」
おれは立ち上がった。
まずは報酬だ。それからブラザーフッドの様子を見に行こう。

(Log14:EoF)