Fallout 1なんちゃってリプレイ Vaultから来た男:Log12「余所者」

「どういうことだよ」
「君の報告にある、特殊変異体について、非常に気がかりな点があるのだ。このままではいずれVaultは彼らによって脅かされてしまうことだろう。戻ったばかりの君に頼むのは非常に申し訳ないのだが、是が非でも正体を突き止め、可能なら排除してもらいたいのだ」
「そうじゃないだろ」
さも遺憾だという風に表情を作り、その実、指令コンソールから降りてこようともしない監督官の顔を睨め付ける。

ネクロポリスから持ち帰ったウォーターチップは無事稼働し、Vault13の危機は回避された。しち面倒くさい報告書を提出して、さてお役御免と部屋に戻った俺は、シャワーを浴びる暇もなく再び司令室に呼び出された。ゲストルームにいるはずのイアンとタイコ、ドッグミートもそろっている。


「俺の仕事は、外の世界からウォーターチップを持ち帰ってくることだったはずだ。それがなんで御用聞きみたいに次から次へとヤバい仕事を押しつけられなきゃならないんだよ」
「君も分かっているはずだ。外の世界について、このVaultで君ほど理解している人間はいないし、過酷な環境で生き延びていける技術を身につけているのも、君だけなのだ。それに」
監督官は勝ち誇ったように付け足す。
「外の世界にあんなに出たがっていたのは、君じゃないか」

分かってはいた。俺はVaultを解放しようと住民を扇動していた危険分子で、厄介払いのために外に放り出されたのだ。もちろん、ウォーターチップが故障したのは深刻な問題だったろうが、逆に言えば格好の口実でもあったわけだ。
ネクロポリスで出会った、人間を攫う特殊変異体――スーパーミュータントとでも言っておこうか――にしたって、確かにVaultの将来にとって脅威となりうるのは間違いない。間違いないが、ここまで露骨に外に追い返されるとは、さすがに思ってもみなかった。

無意識にホルスターに伸びかけた俺の手を、タイコが押さえた。じっと俺の目を見る表情が物語っている。それは外の流儀だ、と。

周りを見回す。かつて「仲間」だと思っていたVaultの連中。リスクを冒さず、安全な隠れ家に閉じこもり、外を見ようともしない。その先が袋小路であったとしても、直接自分の身に降りかからない限り行動を起こさない。
そんな彼らが、怯えたような目で俺を見ている。

俺は今や、「外の人間」になっていた。


「で、結局あのおっさんが言ってた仕事は引き受けるつもりなのかい?」
補給物資として受け取ったカロリーブロックをかじりながらイアンが尋ねる。
「あの監督官がどれほどいけ好かない野郎だとしても、確かにあのデカブツがヤバげなのは間違いない」
俺は暮れかかる太陽を見つめた。たった2ヶ月前には、直視するどころか、その光を浴びることさえまともに出来なかった灼熱の塊にも、いつの間にか慣れてしまっている人間の適応力に驚かされる。とはいえ、すべての人間が可能なわけではないだろう。やれる奴がやるしかない。

「まずは情報が必要だ」
あの巨体に重火器、それに背後に見え隠れする「マスター」とその組織の存在。もっと情報と、そして準備がいる。

戦争の準備が。

(Log12:EoF)