Fallout 1なんちゃってリプレイ Vaultから来た男:Log07「旅の仲間」
ひどい目にあった。
タンディを無事シェイディ・サンズに連れ戻し、村長から報酬を受け取った俺たちは、チップの手がかりを求めて、ここいらで一番大きな町、ハブに向かうことになった。
ちなみに、村長からもらった報酬というのも、そのハブで使用されているという信用通貨のボトルキャップ、通称「キャップ」だ。
キャップというのは他でもない、瓶飲料の王冠、金属製のフタで、この荒野でもっとも貴重なもの、水の象徴として取引に使われている。今では失われたキャッププレスの技術が偽造を困難にしていることからも、ハブのトレーダーたちの間で物々交換に代わり使用されるようになった、と言うことらしい。今ではハブに関わり合いのあるところなら、シェイディ・サンズのような小さな村でも通用する立派な『貨幣』だ。
それはともかく、ハブに向かう途中の町、ジャンクタウンに補給のために立ち寄ったのはいいんだが、早速このキャップを使ってみようと雑貨店に入った途端に、店主兼市長と地元のマフィアの抗争に巻き込まれて、囮捜査の真似事をさせられ、さらには摘発――と言ってもこの荒れた世界のこと、当然のごとく武力衝突に展開した――の助っ人に駆り出された。それが終わったと思ったら、今度は泊まった宿でテンパった客と、えー……サービス業の女性のトラブルで死ぬの殺すのと来た。こちらも何とかあれこれ言いくるめて、事なきを得たのが幸いというか。
「お前、色々首をつっこみ過ぎなんだよ」
イアンがあきれたように言う。
「そのおかげで繋がる縁もある。この荒野において、何が吉と出るかは分からんぞ」
とはガスマスクにコートのショットガン使い、タイコ。マフィア退治の時に助っ人を頼んだ男だが、妙に俺を気に入り、旅の同行を申し出てきた。
祖父が元デザートレンジャーと言うこともあって、砂漠の旅のスペシャリストらしい。
そして……
「あの犬、まだついてくるようだが」
振り返ると、全身が真っ黒な犬が、少し距離を置いて着いてくる。こいつもジャンクタウンで出会ったんだが、こいつにもなぜか懐かれ、町を出てからもずっと着いてきている。
「アイツは先月、主人をギズモに消されてな。奴を殺ったお前に感謝してるんだろう」
ギズモはジャンクタウンのマフィアのボスだ。結局町のガードと撃ち合いになり、俺の10mmで巨体をデスクにうずめることになった。
「よし来い、ドッグミート」
タイコがイグアナ肉を放ると、犬は器用に空中でキャッチして駆け寄ってくる……ってちょっと待った。
「ドッグミートぉ?」
「こいつの名前だ」
タイコは首輪に付いたタグを俺に見せる……確かに。
全く、何つう名前を付けるんだか。あきれてため息をつくと、犬――ドッグミートは行く手をまっすぐ見つめ、一声ほえた。
「見えてきたぞ。あれがハブだ」
丘の上から見下ろした先には、トタン板とコンクリートと日干し煉瓦が混じり合い、絡まり、組み合わさった巨大な交易都市、ハブの姿が広がっていた。
(Log07:EoF)