Falloutリプレイ tMfV:Log16「ホットスポット」
「…だから現地人にはこの技術は公開できないと……ちょっと待った、それはPip-Boyか?」
取り付く島もない、という対応だったパワーアーマーの男は、俺の腕のPip-Boyを見て露骨に態度を変えた。
「まあね。モデル2000だ」
「そういうことは最初にいってくれれば話は早かったものを」
打って変わってにこやかになったブラザーフッド・オブ・スティールのイニシエイト(要するに下っ端だ)、キャボットは内部と連絡を取り、ある条件を出してきた。
いわく、BoS外部の者にパワーアーマーや戦前の兵器を支給することはできないが、Vault出身者である俺は特例として、ある探索を成功させたら入門を認めてもよい、云々。
入門には興味はないが、パワーアーマーやレーザー兵器は、マスターとやらと対決するに当たっては必須となるだろう(そいつがBoS内部にいないとも限らないしな)。
……というわけで、キャボットから聞いた座標に向かって進んでいたわけだが。
小高い丘を越えて、見えてきたのはすり鉢状の窪地。真ん中にはぽっかりと穴が開き、むき出しになった鉄骨がふちを飾っている。
「いったいここで何があったんだ…?」
イアンがつぶやく。
「まあ…みたところ、でっかい何かが落ちてきたんだろうな。たとえば…核ミサイルとか?」
「待て、待て待て待て」
タイコがあわてた声を出した。見ればガイガーカウンターを覗き込んでたたらを踏んでいる。
「放射線の値が計測値を振り切ってるぞ!」
あわててPip-Boyで確認するが、座標に間違いはない。ということは、キャボットの言っていた「エンシェント・オーダーの遺跡」とやらは、その汚染地帯のど真ん中にあるらしい。そりゃ「誰も帰ってきた者がない」訳だ。
とりあえずパックパックからRAD-Xを取り出し、数錠まとめて口に放り込む。これでしばらくの間は、ある程度の放射線にさらされても大丈夫なはずだ。続けてRad-awayを腕から注入。すでに取り込んでしまった放射性物質も、時間とともに体外に排出される。
「おいおい、本当にあの中に入るつもりか?」
イアンがあきれたように言ってきた。
「不安なら戻ってもいいぞ」
突き出した鉄骨にザイルを結びつけながら俺は答えた。確かにイアンやタイコにそこまでする義理はない。
「…確認したかっただけだ。行くぞ」
一瞬の逡巡の後にイアンが言った。タイコはと見ればすでに降りる準備を終えている。ドッグミートにいたっては早くも鉄骨の間を飛びわたり、下の階層へと降り始めていた。まったく付き合いのいいことで。
地表に露出した鉄骨をみればわかるとおり、内部は人工的な空間になっていた。おそらくは研究所か何かだったのだろう。主電源は落ちているらしいものの、非常用電源はかろうじて生き残っているらしく、通路には薄暗い明かりがともっている。
白衣を着た死体が横たわる部屋をいくつか抜け、破壊された通路を避けて大きく回りこむように奥へと進むと、ちょっとした広間へと出た。中央には鎧をまとったシルエットが床に伏している。パワーアーマーだ。
その死体は思ったよりも古いものだったらしい。戦前ということはないだろうが、風化具合から数十年以上前のものであることは間違いない。
「こんなものがあったぞ」
傍らのバックパックを探っていたタイコがホロディスクのケースを手渡してきた。早速Pip-Boyで読み込んでみる。
ホロディスクの中身は作戦記録だった。この男――アレン軍曹の部隊がここ、ウエストテック研究所を探索中、セキュリティに攻撃を受け、命からがらここまで撤退してきたという内容だった。そして残念ながら、部隊は全滅したというわけだ。
「もういいんじゃないか? あいつの言う証拠品は手に入れたわけだしよ」
「いや、まだだ」
イアンの言うとおり、これを持って行けば入団は認められるかもしれない。しかし俺の目的はBoS最高の装備だ。そのためにはもっと具体的な、一目置かれるような実績が必要だ。
「さっきのIDロックされたエレベーター、こいつが下層まで降りたということは……これか」
アーマーのウェストパックを開くと、中に黄色の磁気カードが入っていた。
「さあ、アレン軍曹がなしえなかった探索を、俺たちが果たそうじゃないか」
(Log16:EoF)