Fallout 1なんちゃってリプレイ Vaultから来た男:Log04「サソリ退治」
「イアン、そっち行ったぞ!」
「分かってる」
目前に迫る鋭い尾針をものともせず、甲殻の隙間に2連射。体勢を持ち直す暇を与えず、さらに頭部に10mm弾を撃ち込むと、さしもの大サソリも動かなくなった。この間、およそ5秒。俺が援護する隙もない。
「これで全部のようだな」
「ああ、卵も全部つぶした、と思う」
念のため、残された卵に一発ずつ撃ち込んでいく。
俺とイアンは、シェイディ・サンズにほど近い洞窟に、この巨大サソリ、ラッドスコーピオン退治に来ていた。
2日前、砂漠で倒れた俺は、シェイディ・サンズのパトロールに発見され、村長の家で手当を受けた。
シェイディ・サンズは人口20人ほどの小さな村で、乏しい水源を頼りに細々と暮らす貧しい村だったが、この荒れた世界にあって驚くほど友好的な所だった。
村の誰もが困った人間を放っておけない気質らしく、俺の他にも、キャラバンの護衛で負傷した用心棒も療養していて、それがこの無愛想な男、イアンって訳。
単なる脱水症状と熱射病だった俺は、一晩でほぼ回復したんだが、食料も水もスッカラカンということで、介抱のお礼と旅の食料と引き替えに、家畜や村人を襲う大サソリ退治を申し出たというのが事の顛末だ。もちろん、俺一人では心許ないって事で、イアンをなだめすかして引っ張ってきた。
しかし、病み上がりとはいえ、さすがこの世界を生き抜く用心棒。イアンの銃の腕はハンパじゃなく、正直俺がいなくても何とかなったんじゃないかと思えるほどだ。
というわけで村に戻った俺たちは、サソリの脅威から村を救った英雄として大げさなほど感謝され、盛大な宴会が催された。村人、特に村長の娘、タンディ――例のハミングの主だ――からはサソリ退治や砂漠の冒険譚をしつこくせがまれ、9匹だったサソリは30匹になり、追いはぎは50人の大群にふくれあがった。
宴はいよいよ盛り上がり、約束の食料にはとっておきのバラモンのジャーキーが追加され、熱射病予防のポンチョやらロープやらがバックパックに詰め込まれる。ガラじゃないが、たまにはヒーローってのも悪くないね。
何だかよく分からない酒を飲まされて、二日酔いとともに昼頃起き出す羽目にならない限りは。
太陽が西に傾き、強烈な日差しが弱まった頃、もう一泊と引き留める村人を振り切って、俺と、改めて用心棒として雇ったイアンは、Vault15へと旅立った。まだ時間はあるとはいえ、歓待を受けるのはチップを持って帰る時でもいい。
Pip-Boyの表示によると、目的地までは3日ほど。現地での交渉に1日かかるとしても、1週間後には戻って来られる筈だ。
(Log04:EoF)