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2004年10月07日
アトミック・カフェ(ネタバレ)レビュー
1940?50年のアメリカ政府、軍が作成したフィルム、当時の報道フィルムと音楽をもとに作成された編集ドキュメンタリー。
テーマはズバリ、核。
ヒロシマ、ナガサキから始まり、ビキニ諸島などの核実験、そして水爆実験と、それらに対するアメリカ国民の反応、報道の様子を当時のフィルムだけで構成、ナレーションも一切なしという作り。
まあ、もちろんそれで完全に公正な視点になっているかといえばそうではないけれど、少なくともある面の真実がそこに隠されているとは言えると思います。
戦争を早く終わらせるために神が与えた夢の新兵器、原爆。
その被害がつぶさに記録されたのにもかかわらず、それを知らされずはしゃぐアメリカ国民。
しかしそれも、冷戦の相手、ソ連が原爆を持つに至り、次第に不安へと変わっていきます。
より確実な手段としての効果が求められた原爆は、数々の実験が繰り返されます。ビキニ諸島での実験、豚を用いた生体効果実験、そして塹壕で爆風を避け、キノコ雲に向かって進軍する兵士達。今から考えれば悪夢のような光景が、フィルムという証人の力で克明に描写されていきます。
「熱、衝撃、放射能。この中で目新しいのは放射能だが、実はこれはもっとも大したことのない効果だ」説明を受ける兵士達。
つまりそれは、パラノイアと無知のなせる光景。
もちろん、一部の人間はその隠れた危険性を知っていたのでしょう。しかしそれは国民や兵士には知らされず、単なる強力爆弾程度の認識で受け入れられていきます。
「原爆が落ちてきたらどうする? 素早く伏せて、頭を隠そう!」
そんな教育映画が流れます(映画「アイアン・ジャイアントで流れる「ダック・アンド・カバー」という劇中劇と同じ形式です)。
そして街では「強力な」原爆にあやかって、アトミックソング、アトミックカクテル、アトミックカフェがメディアに登場していきます。
それらを今の私たちが笑うのはたやすいことです。実際、上映中にもあちこちから失笑が漏れていました。
しかし、私たちは本当に、すべてを知っているのでしょうか。与えられた情報を鵜呑みにして生きていくだけであれば、フィルムの中の、あっけらかんと核を享受する人々と変わらないのではないでしょうか。
スタッフロールに冷戦ポップスが流れたあと(君と僕の冷戦はもう終わりにしよう……)、そんな不安とショック胸に、映画館をあとにしたのでした。
アトミック・カフェ - THE ATOMIC CAFE -
http://www.takeshobo.co.jp/movie/atomic/
ユーロスペース
http://www.eurospace.co.jp/
投稿者 だいすけ : 2004年10月07日 02:32 映画・ビデオレビュー
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