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2004年04月19日

バトル・ロワイアル(小説)レビュー

高見広春著。
架空の独裁政権下日本(正確には「大東亜共和国」)。そこには数年に一度、全国の中学校から一クラスをランダムに選び、特定のエリアで殺し合いをさせるという「プログラム」と呼ばれる制度があった。
城岩中学校3年B組は修学旅行に向かう途中、隊列から外れて別の場所へと向かう。今回のプログラム対象はこの3年B組である……。

とまあ、映画化されて社会問題にもなったので、この作品のことを知らない人は少ないと思いますが。
ただ、小説が出た時や映画化された時に残酷性がクローズアップされたので、避けてた人もいるかもしれません。私もそのうちの一人だったわけですが。

小説発表時のセンセーショナルな煽り文句(あまりの衝撃的内容に日本ホラー大賞を満場一致で落選、別出版社から復活とかそういうもの)、日本で政府が殺し合いをさせるという無理のある設定(架空日本とは知らなかったので)などで、かなり色物感が強かったし、映画公開からは妙な熱気で手を出しづらかったというのもあり、ずっとノーチェックだったのですが、文庫版も出たことだし、熱も冷めた頃なので読んでみました(直接のきっかけは映画版「2」のレンタルポップを見たことですが)。

なので今回は原作の小説のほうの感想、レビューを。

最初は上記のような先入観をもちつつ読んでいったんですが、次第にそれは間違いだったと気づかされました。
独特のハードボイルドな乾いた文体、容赦のない展開で先が読めず、40人以上の登場人物も、順を追って描写していく(そして死んでいく)事により思ったよりずっと混乱も少なく読めました。これは人物の名前が覚えられない私にとっては大いにプラスです。
主要人物もツボを押さえてキャラ立ちさせているので、同人関係でキャラ別にファンが付くのもうなずけます。この辺はかなり巧いと感じました。
文庫サイズで千ページ近い分量で、前半は少しずつ読んでたんですが、ジェットコースターのように加速していく展開に、後半は一気に読み切らされる始末。

描かれている状況も、中学生同士が殺し合うという、一見俗悪なものですが、突き詰めてみれば、映画「CUBE」のような、「異常な状況に陥ったら、人間はどう行動するのだろうか」というテーマにも通じるものがあると思います。実際、私も「この状況ならどうするんだろう」と思いながら読んでいましたし。
映画版がどのような展開になっているのかは未見なので分かりませんが、これを中学生に見せないようにする、というのはあまり賢いやり方ではないような気もします。むしろ観て(読んで)、そういうことを考えて欲しいかな、と思ったり。

というわけで個人的にはお薦めの一冊(上下巻ですが)。

投稿者 だいすけ : 2004年04月19日 23:27 本レビュー

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