Fallout 1なんちゃってリプレイ Vaultから来た男:Log13「デスクロー」

「キャラバンを襲う怪物?」
俺たちはハブに戻り、例のスーパーミュータントの手がかりを探していた。
一日中歩き回って空振りに終わり、これは望み薄かとあきらめかけていた頃、用心棒時代のツテでトレーダーに聞き込みに行っていたイアンが、気になる話を仕入れてきた。

「なんでも、ここしばらくのうちに立て続けにキャラバンが襲われているらしい。行方を見つけた奴には賞金を出すと言っているそうだ」
イアンが言うトレーダーは、ハブのトレーダーの3番手、「ファー・ゴー・トレーダーズ」で、他の2社に比べてもっとも被害が多く、このままでは商売が立ち行かなくなるということで、かなり焦っているらしい。
「で、オーナーによれば、その化け物のことを触れて回ってるじいさんがいる、って事だが……どうもそのじいさん、相当イッちまってるらしくて、誰も相手にしてないんだと」

何とも怪しい話だが、今はどんな情報でも欲しい状況だ。俺たちはハブの中でも最も治安の悪い地区、オールドタウンに赴くことにした。


オールドタウンはダウンタウンに住めないような食い詰め者やジャンキー、犯罪者が逃げ込むようなスラムで、まともな奴ならまず近づかないような場所だ。
完全武装のガードが固める門を抜けると、通りにはうつろな視線のヤク中や、これ見よがしにナイフをちらつかせるチンピラ、ネクロポリスから流れてきたのかグールまでがうろつき、路地の奥からはうめき声や何かが割れる音、時折銃声も聞こえてくる。
件の老人もそんな連中の1人で、ブツブツと独り言を言いながらさまよっていた。

「なあじいさん、ちょっと聞きたいことがあるんだが……」
声をかけると、老人は焦点の定まってないような目でこちらを見る。
「おお、お前さんもデスクローの話を聞きに来たのか?」
「デスクロー?」
「ありゃ恐ろしい化けもんじゃ。身の丈は6メートルはあっての。見つけた人間を片っ端から引き裂いて食っちまうんじゃよ」
自分でいいながら恐ろしくなったのか、腕を抱いて震え上がる。
「そいつがキャラバンを襲ってるのか?」
「キャラバン?」
「デスクローがキャラバンを襲ってるのかって聞いてるんだ」
「おお、キャラバンか! わしのキャラバンはそりゃ立派なもんでな。昔はボーンヤードまでよく取引にいったもんじゃったよ」
「いやそうじゃなくて、キャラバンを・デスクローが・襲ってるのか・って聞いてるんだ!」
頭が痛くなってきた。

老人の話は要領を得ず、肝心の話を聞き出すのに日暮れ近くまでかかった。
ともかく、話をまとめるとこうだ。この老人はキャラバンが巨大な化け物に襲われるのを見たらしい。その化け物というのはデスクローという名前で、その名の通り巨大な爪と二本の角、6メートル近い巨体を持っているらしい。そのデスクローとやらがハブの近くの谷の洞窟に入っていくのを見た、と。

「空振りじゃねえか」
どう聞いてもスーパーミュータントとはつながりがなさそうな話だ。とはいえ、あの軍隊と事を構えるには先立つものが必要だ。
俺たちは老人が言っていた谷の洞窟を調べてみることにした。




洞窟には動物の骨や死体、キャラバンの荷物とおぼしき箱や何やらが散乱していた。襲った奴が何者であれ、襲撃犯がここにいるのは間違いないらしい。
銃を構え、やけに静まりかえった洞窟を進むと、やがて何かを咀嚼するような音が聞こえてきた。暗闇に目をこらすと、何かにかがみ込んでいるシルエットが見える。ただし、サイズは倍以上だ。
先手必勝と背後から狙いを付ける……と、気配に気づいたのか、影は俊敏に立ち上がると振り返り、猛然とダッシュしてきた。すかさず.223弾を撃ち込むが、まったくひるむ様子もなく、無造作に長大な爪をふるってくる。目の前を切っ先がかすめ、髪が一束持って行かれる。危ない。タイコが俺ごと突き飛ばさなければ、持って行かれたのは首から上だったろう。

転がって間合いをあけて立ち上がり、荒れ狂う刃の嵐のようなデスクローに対し、3方向から取り囲み、常に背後から攻撃して相手に集中させないようにする。
……とはいえ、相手は必殺の攻撃を持つのに対し、こちらの攻撃は牽制以上に効果はない。このままではジリ貧だ。

と、そのとき、うなり声とともに足元から黒い影が飛び出し、低い姿勢を生かしてデスクローにとりつき、その背後に牙を立てた。ドッグミートだ。骨格の構造上背中に手が回らないのか、デスクローは奇妙なダンスを踊るように両手を振り回す。

このチャンスを逃す手はない。俺は片膝を付き、全神経を照門と照星、そしてそれをつなぐ先の、唯一の弱点であろうデスクローの目に合わせた。アドレナリンが全身を駆けめぐり、他のすべての要素を消し去る。時間の流れがゆっくりになり、ついには静止する。息を吸い、吐き、止め、鼓動に合わせて引き金を絞る。

弾丸はデスクローの目をえぐり、頭蓋の中身をかき回し、後頭部から吐き出させた。デスクローは少しきょとんとしたような表情をし、一瞬後、ゆっくりと倒れた。



「おいテオ、こいつを見てみろ」
動き回る化け物へのブルズアイという偉業を成し遂げ、半ば放心状態だった俺をイアンが揺さぶる。なんだよと送った視線が凍り付く。

デスクローの今夜のディナーは、どうやらスーパーミュータントだったらしい。


(Log13:EoF)